2014.12.17
株式会社立地評価研究所 相続・事業承継チーム | 不動産鑑定士 川島忠夫
2015年1月より相続税の課税が強化される。特に、親が不動産を多く保有している人たちの対策として注目を浴びているのが、社団法人の設立だ。日本経済新聞によると、2013年までの2年間で約17,000社近く設立され、それ以前の2年間の2.4倍に膨らんでおり、その多くが相続税対策と言われている。公益のために設立される建物の社団法人には税務上、財産の持分という概念がないため、相続税の回避が図れること、設立手続きも煩雑ではない点などがその背景にあるようだ。
社団法人は設立時に資本金も不要で、理事1名、社員が2名(理事が兼務可)いれば簡単に設立でき、最近は数万円の手数料で設立申請を代行する業者も現れている(別途登録免許税等は必要)。
例えば、父(被相続人)を代表理事にして、母や子を理事(社員)にする。そして被相続人が所有している収益用不動産をその法人に売却・贈与するなどして資産を移転し、節税につなげる人が増加している。
財産の受皿を、株式会社とした場合と社団法人とした場合とを対比してみたい。
株式会社を作った場合は、株主(親=被相続人)が会社の財産権を持つので、株主の死亡時に相続税が課税される。
これに対して社団法人の場合には、出資持分がなく、株主等が存在しない。つまり社団法人が保有する財産には相続税がかからないことになる。また理事である被相続人が死亡した際の死亡退職金に関しては、受取人である遺族は相続税が課されるが、死亡退職金には基礎控除とは別に500万円×法定相続人の人数の非課税枠があるので、効率的な節税が可能となる。
注意点はいくつもあるが、例えば社員が0人になると法人は解散、残余財産は国や自治体の所有物となる可能性がある。これを回避するために、社員を親族以外から採用すれば、財産が親族外に流出する可能性がある。そもそも論ではあるが、将来の制度変更リスクなどにも注意は必要となる。